dream

□シェーン1
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ペリカンタウンに移住してから24日目の朝、コルクボードに貼り付けられた町長からの手紙に目を配る
そこに書かれた"フラワーダンス"の文字に皆目見当もつかないが、町人たちと距離を縮めるチャンスだ
ミカウは寝起きでぐしゃぐしゃのロングヘアーにブラシを通しながら目の前の鏡で笑顔の練習を始めた。










「あ、ミカちゃーん!こっちこっち〜」

最近仲良くなったばかりの牧場仲間のテトに名前を呼ばれ彼女の元へ歩み寄ると、フラワーダンスの名に恥じぬ華やかな雰囲気漂うイベント会場が設営されていた。
樽で作られたプラントの中で生き生きと咲き誇る花たちが等間隔で飾られ、端に置かれたテーブルには立食しやすい料理が並べられている。
小さな町のイベントにしてはなかなか気合が入っている、と失礼ながらミカウは感心していた

「そうそう、ミカちゃんはフラワーダンス誰と踊るの?」
『え?』
「フラワーダンス!町長からの手紙に書かれてたでしょ?ダンスパートナーを誘ってみなさいって」
『…そうだっけ』

そんな文章が載っていたことすら記憶になかった。
そこへテトが申し訳なさそうに続ける

「もし私が一緒に踊れたら踊るんだけど…私、パートナー決めちゃってるから…」
『テトちゃんは誰と?』

えへへ、とはにかみながら彼女が指差す先に立っているのはハーヴィーという診療所の医師だった

『前に話してた先生?』
「そうそう」

僅かに赤面させて話すのは、あの男性がテトの心を動かし始めているから。
町人の名前を覚え、自分の牧場を整えるだけで精一杯のミカウから彼女に尊敬の眼差しが送られる
そこまで距離を縮められることも自分の気持ちに気付くことも容易ではないから。
ごめんねと一言謝るテトに"気にしないで"と微笑む。
初対面で印象の良くない自分を最初から可愛がってくれる姉のような、大事な友達の恋路は素直に応援したかった。

『…ダンスの練習した方がいいんじゃないかな』
「あ!先生と約束してたんだ」
『いってらっしゃい』

とても可愛らしく、嬉しそうに笑みを溢すテトへ手を振りながら、ミカウは時間潰しのアイテムを探さねばならなかった。

立食コーナーで何かつまもうか
誰かと会話してみようか
選択肢はいくらでも湧き出てくるのに実際行動に移すのはどれも面倒だった。
だからといって何もせず一人で突っ立っていれば、世話焼きのルイス町長を心配させてしまうだろう。

『(あそこで立ってればいいか)』

何をしてなくてもなんとなく様になりそうな、料理の並ぶテーブルの側へと歩み寄った。







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